カルチャーは偶然じゃない:組織のモメンタムを生む5要素

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本記事は、IVRy Advent Calendar「みんなが知らないIVRy!」15日目の記事です。

IVRyにはモメンタムがある

「良い雰囲気のコミュニティはどうやって生まれ、どうやって維持され、何をきっかけに衰退するのか」にずっと興味があります。趣味で地域コミュニティの立ち上がりを複数見てきた経験もあり、会社組織もまた“コミュニティの一形態”だと捉えると、勢いのあるスタートアップは観察対象としてとても面白いです。

IVRyにはいま、間違いなく「モメンタム」と呼べるものがあり、オフィスには明るい空気があります。本記事は、IVRyを見て感じた要因を、個人の私見を元に整理したメモです。

ここで言う「モメンタム」は、たとえば以下のような状態を指します。

  • 意思決定が速く、試行回数が増える
  • チーム間の協力や称賛が回り、挑戦が増える
  • 出社/参加したくなる空気があり、採用にも好影響が出る

結論として、モメンタムを生む要素を大きく5つに整理しました。

  • 前提(事業): 事業が順調で、成果が出ている(または出す設計がある)
  • 増幅(リーダー): リーダーのふるまいが「場の温度」を上げ、安心感を増幅する
  • 伝播(仕組み/儀式): 称賛や笑いが“安全に”回る仕組みがある
  • 参加(余白): 提案→実行→共有まで回る裁量(時間・予算・場・心理的許可)がある
  • 持続(規律): 自由の前提となる責任が言語化され、繰り返し共有される

以降は各要素を「観察 → なぜ効く(仮説) → 再現するためのヒント → 注意点」の順で書きます。

前提(事業): 「成長がすべてを癒す」はカルチャーにも当てはまる

観察

まず認めないといけないのは、今の良い雰囲気は「事業がうまくいっている」ことが大前提にある点です。IVRyでは様々な人が工夫でモメンタム/カルチャーを維持しようとしていますが、それ“だけ”ではありません。

なぜ効く(仮説)

事業が順調だと、心理的にも時間的にも「次の一手」に投資でき、工夫が工夫として機能します。逆に事業が厳しい局面では、どんなに良い仕組みも“負荷”として知覚されやすく、空気は一気に硬くなります。

再現するためのヒント

  • 優先順位(何を捨て、何を勝ちに行くか)を、組織の末端まで説明できる状態にする
  • 直近の成功体験を“組織の資産”として共有し、挑戦の原資(時間/予算/余力)を確保する

注意点

「事業が順調だからうまくいっている」を言い訳にしないこと。順調さは前提ではある一方で、それだけでは“良い空気”は長続きしません(次の要素が効いてくる)。

増幅(リーダー): リーダーのふるまいが「場の温度」を決める

観察

2番目に大きいのは、発起人/リーダー/旗振り役の“気質”というより、日々のふるまいが作る温度感だと感じています。IVRyのリーダーである社長奥西さんは、肩書きの距離を縮めるようなふるまいが一貫しているように見えます。

たとえば、イベントの場で自ら場を明るくする役回りを引き受けたり(社長は毎回へんてこなコスプレをしています)、社内のイベントやお祝いごとを過剰なまでに盛大にやったり。結果として、社員側も「そのテンションで参加していいんだ」と解釈しやすくなります。「明るい職場にしたい、みんなに笑ってもらいたい」というモットーを、コンテクストを知らない新入社員でも一撃でひしひしと感じるほどです。

(社内の雰囲気の一端が伝わる例として)従業員代表選挙がイベント化している様子

”普通の会社”に慣れている自分にとっては「社長をそんな雑に扱っていいのか」と思うほどカジュアルにSlackの奥西さんtimesチャンネルでよく社員によって(愛を持って)イジられている様子を見ます。社長なのに。

なぜ効く(仮説)

リーダーが「気楽に振る舞う」「称賛する」「巻き込む」「失敗を回収する」などのふるまいを繰り返すと、場の“許可”が出ます。許可が出ると、発言・提案・冗談・助け舟が増え、空気が増幅します。

再現するためのヒント

  • リーダーが、体現したい場の温度を定常運転にする
  • “場を明るくする”を、誰かの善意ではなくリーダーの仕事として扱う

注意点

リーダーのノリは、規模が大きくなるほど誤解されやすくなります。「誰も置いていかない」ための説明や配慮(次の“ガードレール”)がセットで必要です。

伝播(仕組み): 称賛や笑いが“安全に”回ると、発言量が増える

観察

社内Slackには、1週間で集めた「草(笑い)リアクション」の数を集計して発表する“草ランキング”があります。発言が可視化され、称賛や笑いが「回っている」こと自体が共有される仕掛けです。 (このランキングは社長がずっと1位であり続けることを狙っていて、他の社員にその座を奪われると悔しそうにしています。)

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また、発言が滑っていたら 🏂 をつける“スベってるよ”系の軽いお約束もあり、隙あらばボケる/ちゃんと突っ込まれる、が日常にあります。入社当初は「みんなよくSlackを見て笑ってるな、へんな会社だなぁ」と驚きましたが、いまは自分もよくSlackで笑っています。電車ではSlackを開かないようにしているほどIVRyのSlackは愉快に溢れています。

なぜ効く(仮説)

誰でも基本的に馬鹿だと思われたくないので、記録が残るチャットのコストは高いです。ところが“冗談が許される空気”があると、発言のハードルが下がり、提案や助けを求める声も出しやすくなります。結果として、意思決定や試行回数が増え、モメンタムに繋がります。
“笑い”はバカにはできず、なにかの投資家Podcastで聞いた話では、事業が順調じゃないとオフィスから笑い声が消えるというバロメーターがあるらしく、それを知るためにオフィスを見に行ったりもするそうです。

再現するためのヒント

  • 称賛を“偶然の良さ”にせず、週次/定例で回す(仕組みにする)
  • リアクションやコメントの「型」(どこを称えるか)を暗黙でも共有する

注意点(ここが一番大事)

「笑い」は常に安全ではありません。成立させるにはガードレールが必要です。少なくとも以下が守られている(または回収される)ことが重要だと思います。

  • 誰かを貶める方向のいじりをしない
  • 滑っても回収(ツッコミ/フォロー)される
  • 権力勾配がある相手ほど“いじり”が雑にならない(敬意が担保される)

参加(余白): 提案→実行→共有まで回る裁量が、愛着を生む

(この記事で言う「余白」とは、提案して終わりではなく、提案→実行→称賛/共有までが回るための裁量(時間・予算・場・心理的な許可)がある状態のことです。)

観察

IVRyの全社会議では、話者が入れ替わるときにその人に合った「登場曲」を流すお決まりがあります。ステージ脇には配信/音響系の機材が常設され、こだわりのある人たちが視聴体験を作り込んでいます。これはただの一例ですが、こうした“本筋ではない”こだわりが、一定の裁量のもとで回っています。

また、オフィスには(例として)ボルダリングウォール、DJ機材、ダーツ、麻雀卓、業務用コーヒーメーカー、懸垂バー、ドラ、ポップコーンマシーン、日本酒セラー、実験用RaspberryPiが設置されているなど、「出社したくなるオフィス」を目指していることが伝わってきます。社員同士の会話が自然に起こりやすいような小道具がたくさんあり、自らいろいろなコミットを掻き立てられるような雰囲気や余白を残しています。
具体が気になる方は、3日目のこちらのアドカレが参考になります: 【オフィスツアー】IVRyのオフィスを紹介します!

なぜ効く(仮説)

業務と直接関係がなくても、クリエイティビティを発揮できる場があると、参加感が増えます。「自分がこの場の一部を作っている」という感覚が愛着になり、結果としてコミットも増えます。
一般的には お金の無駄/属人的なオペレーションを増やすことへの忌避 というもっともな理由によってにべもなく禁止されるのが普通ですが、こういったことが許されているという事実自体が言外のメッセージとなり、「自由で働きやすそうな組織だ」という印象を実質的に生んでいると感じています。

再現するためのヒント

モノを揃えること自体が本質ではなく、次の3点が共有されている状態を作るのが本質だと思います。

  • なぜそれをやるのか(狙い)
  • 誰がオーナーを持つのか(責任)
  • どこまで自由にやっていいのか(裁量の範囲)

「持ち寄って場を作る」タイプの活動も、参加を生む良い例だと思います: 日本酒が繋ぐIVRy ― 入社1年の僕が見た「人が集まる」文化

注意点

余白は増やすほど、属人化・運用負荷・排他性(内輪感)が生まれます。必ず“持続の規律”とセットで設計する必要があります。

持続(規律): 自由の前提となる責任を、繰り返し共有する

観察

これまで紹介したように、緩くて自由な雰囲気がある一方で、行き過ぎたり後始末が回らなかったりしたときには、折に触れて「責任と自由」の話が周知されます。

果たすべき個人/事業の責任を全うした上に、いろいろな自由や楽しさの追求が初めて許されます。儲かってもいないのにボルダリングウォールをオフィスに設置しようというようなことは当然投資家も許してくれません。株式会社としての還元の算段があるからこそ、一見事業に直接的には関係しないことも許容されているという現実を忘れてはいけない、自由に楽しく働けるようにそれを忘れないようにしよう、ということが折に触れて語られます。

なぜ効く(仮説)

自由はコストであり、誰かがそのコストを負担しています。責任が言語化されると、「ここまでは自由、ここからは責任」という境界が揃い、余白が“持続可能な余白”になります。

再現するためのヒント

  • 自由の前提(責任・優先順位・後始末)を、定例やオンボーディングで繰り返し語る
  • “良いノリ”が事故ったときの回収方法(誰が止めるか/どう謝るか)を決めておく

注意点

責任は常に動的です。組織/個人の裁量が大きくなると、同じ行為でも社会的な意味合いが変わります。「今しかできない」を楽しむほど、同時に“今しか許されない”を自覚しておく必要があります。

まとめ:モメンタムを生む5要素

「なぜIVRyにはモメンタムがあるのか」を自分の理解でまとめると以下です。

  • 前提(事業): 事業を成功させる目標と優先順位が明確で、成果が出ている(or 出す設計がある)
  • 増幅(リーダー): リーダーが「場の温度」を自分の行動で作る(称賛/巻き込み/回収)
  • 伝播(仕組み): 称賛や笑いが“安全に”回る仕組みがある(ガードレール込み)
  • 参加(余白): 余白(裁量/時間/予算/場/発表機会)があり、提案→実行→共有まで行ける
  • 持続(規律): 自由の前提となる責任が言語化され、繰り返し共有されている


最後に、「自社の場合はどうだろうか?」と考えるときの問いかけを置いておきます。

  • 前提: いま何に勝ちに行っていて、何を捨てているかを末端まで説明できるか
  • 増幅: リーダーが称賛・巻き込み・失敗の回収を“頻度高く”やっているか
  • 伝播: 称賛/笑いが回る仕組みがあるか(同時に、誰も傷つけないガードレールがあるか)
  • 参加: 提案→実行→共有まで回すための裁量(時間/予算/場/許可)があるか
  • 持続: 自由の前提となる責任(後始末・優先順位・説明責任)が繰り返し共有されているか

長くなりすぎるので今回は割愛しますが、当然、これらは同時に危うさも生みます(例:規模が大きくなると“内輪ノリ”が排他性になる、など)。「組織のモメンタム」に関心がある人たちとまたお話してみたいです!

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